溶解性鉛とは水に溶けた鉛がイオンとなって水中に存在したものです。
鉛は柔らかい特性があり、加工しやすいという特性を持っています。水道管もその一例です。
しかし現在は水道管に利用されることはなくなりました。
それはなぜでしょうか?
この記事では、溶解性鉛とは何であるのか、
身体や環境にどのような悪影響があるのか、
水道水に含まれる可能性ついて解説します。

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鉛は釣り具やバッテリーなど
身のまわりで使用されている
溶解性鉛の元となる鉛は身近な化合物です。バッテリーや釣り具、またスズとの合金は「はんだ」と言われ溶接作業で頻繁に使用されています。安価で加工しやすい鉛は汎用性が高い金属と言えるでしょう。
かつては水道管やペンキなどに広く使われていたのですが、水中に溶けだした溶解性鉛は人体や環境に悪影響を及ぼすことが問題視され、だんだんと使われなくなりました。
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溶解性鉛は身体に毒性を持つ
鉛は加工性に優れた物質である一方、その毒性により人体に様々な障害を引き起こす可能性があります。
いられる物質ですが、その毒性により人体に様々な障害を引き起こす可能性があります。
溶解性鉛の健康影響としては血液毒性や神経毒性などが知られていますが、ここでは特に毒性レベルの高い生殖毒性、発がん性、特定標的臓器・全身毒性(反復曝露)について紹介します。
生殖毒性
生殖毒性とは生殖機能や胎児の発育に影響を与えることを指します。溶解性鉛は、GHS区分で1A(ヒトに対して生殖毒性があることが知られている化学物質)と定義されています。GHSは、化学品の危険性を統一された基準に基づいて分類し、分かりやすい表示方法で情報を伝える国際的なシステムです。
ヒト曝露例で精子形成への影響や女性職業曝露例での排卵障害などのデータを元に1Aというハイリスクな区分に設定されたようです。ここでいう「曝露」というのは有害物質にさらされることを意味します。
発がん性
溶解性鉛は、GHS区分で区分2(発がん性のおそれの疑い)と定義されています。ヒトでのデータは不十分ですがIARC(国際がん研究機関)でグループ2B(ヒトに対して発がん性があるかもしれない)とされていることを反映していると考えます。
特定標的臓器・全身毒性(反復曝露)
特定標的臓器・全身毒性(反復曝露)とは、繰り返し暴露することで特定の臓器や全身に障害を引き起こすことを指します。鉛はGHS区分で1(危険有害物質)と定義されています。
これはヒト曝露例での高血圧などの心臓血管系への影響や免疫への影響、その他造血系、中枢神経系、腎臓、末梢神経への影響を考慮したものです。
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溶解性鉛は
法によって規制されている
鉛はその毒性や汚染性から、以下のような法律によって規制されています。
・化管法
・環境基本法
・大気汚染防止法
・水質汚濁防止法
・下水道法
・土壌汚染対策法
・廃棄物処理法
・水道法
・労働安全衛生法
これらの法律では、鉛の排出や放出を制限したり、水質基準や環境基準を設定したりしています。また水道事業者や給水装置の所有者に対して、鉛給水管の廃止や鉛濃度の測定などを義務付けています。
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溶解性鉛は水道水中に検出される恐れがある
鉛は主に鉛製給水管や鉛を含む配管材料から溶出することで水道水を汚染する可能性があります。現在は塩化ビニールなど無害な物質が使われていますが、古い水道管ですと鉛が使用されていることがあります。
このため厚生労働省は、鉛製給水管の早期廃絶を目指して、水道事業者や給水装置の所有者に対して、広報活動、布設替計画の策定、鉛濃度の把握、鉛の溶出対策などを指導しています。
国内の各水道事業体の取組みにより、2008年度比で2017年度の残存延長は 58.7%、残存件数は 53.6% まで減少しており、基本的には安心して良い結果ですが、鉛給水管が残っている古い住宅地では検出される可能性があるでしょう。
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水道水中の溶解性鉛は家庭で除去できる
水道法では「鉛及びその化合物」の水中濃度を1Lあたり0.01mg以下に規制しています。ただし東京都水道局の2022年度の水質検査結果のデータをみると、いずれの地点でも0.001㎎/L未満と基準の10分の1に満たない値でした。
法規制により水道水に溶解性鉛が含まれる量はごくわずかとはいえ、古い住宅地では鉛製給水管が残存している可能性は十分にあります。
古い住宅にお住まいで鉛給水管が残っている地域の方は、自治体が給水管の交換を補助してくれることもあるので、まず問い合わせすると良いでしょう。
また、自身で溶解性鉛を除去したいという方もいるでしょう。
一番簡単な除去方法は、浄水器や浄水型ウォーターサーバーを利用することです。浄水型ウォーターサーバーを選ぶ際、溶解性鉛が対象物質に含まれているかを確認し、選ぶようにしてください。
またフィルターの交換を怠ると浄水機能が落ちて溶解性鉛の除去が不十分となる恐れがあるので注意しましょう。交換時期に自動でカートリッジを届けてくれる浄水型ウェーターサーバーを使うと交換を忘れる心配がいりません。
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まとめ

今回は溶解性鉛について説明しました。
・古い鉛水道管では溶解性鉛が水道水に流れ出す恐れがある
・生殖毒性や臓器毒性には高い懸念がある
・浄水型ウォーターサーバーなどで除去が可能
水道局のデータを見る限り心配し過ぎる必要はありませんが、古い住宅にお住まいの方などは心配が残るかもしれません。その際は浄水型ウェーターサーバーや自治体に相談することで問題を解決できます。
ぜひ、溶解性鉛の心配がないおいしい水を飲める環境づくりをしてください。