ジブロモクロロメタンという成分をご存じでしょうか。
実は水道水中に微量ながらも必ず入っている成分です。
この記事では、ジブロモクロロメタンがどのように生成されるのか、
身体へ影響するのか、そして自宅でもできる除去方法について具体的に説明します。

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ジブロモクロロメタンは
トリハロメタンの一種
ジブロモクロロメタンはトリハロメタンの一種です。
水道水中に含まれる消毒成分である塩素と有機物(フミン質)が反応して生成される化合物を水道副生成物と言います。
そのなかで特定の分子構造を持った成分がトリハロメタンです。
トリハロメタンの一部は、総トリハロメタンという名称で規制されており、水道法よると1Lあたり0.1㎎以下の基準が設けられています。
これを超えると法律に従って、主に活性炭を用いた方法で除去されます。
ちなみに水道法とは、日本の上水道事業について定めている法律であり、公衆衛生の向上と生活環境の改善を主な目的としています。
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ジブロモクロロメタンの安全性への懸念3つ
ジブロモクロロメタンには、動物実験で発がん性やその他の毒性を持っている可能性が研究で分かっています。いずれもラット実験が主ですが、以下の危険性の懸念があります。
発がん性
ジブロモクロロメタンの発がん性について、各研究機関で次のような分類がなされています。
国際がん研究機関(IARC)によると1999年に分類3(ヒトに対しての発がん性については分類できない)とされていますが、アメリカのEPA(米国環境保護庁)の1992年の検証によると区分C(ヒト発がん性があるかもしれない物質)と定義されています。
ただし評価年度が一番新しいIARCの結果を踏まえると、人に影響するほどの発がん性を持つ可能性は低く、発がん性はそこまで心配する必要はなさそうです。
生殖毒性
カリフォルニア州で行われた複数の研究によると、飲料水からのジブロモクロロメタンの摂取と自然流産、精液の質、先天性奇形との関連性は見られませんでした。ただし、北カリフォルニアの18〜39歳の既婚女性を対象にした別の研究では、水道水中のトリハロメタンへのばく露と月経周期の関連性が見つかりました。この研究では、ジブロモクロロメタンや臭化物を含む水道水を摂取することで、月経周期や卵胞期が短くなる傾向がありました。
動物実験では、ジブロモクロロメタンをマウスに高濃度で投与すると、体重増加抑制や受胎率の低下、出産率の低下、同腹児数の減少などの影響が見られました。しかし、妊娠中のラットにジブロモクロロメタンを投与しても、胎児には発生影響は見られませんでした。
したがって、トリハロメタンの影響を考慮して、この物質はGHS分類の区分2(飲み込むと非常に危険)に該当し、厳しく規制されています。
特定標的臓器毒性
ジブロモクロロメタンは、ヒトに関する情報は不明ですが、ラットを用いて継続的に経口摂取させた結果、肝臓と腎臓に関連した影響が見られることが示されています。ラットにおける経口投与毒性試験では、一定範囲の投与量以上で肝臓の重さの増加、肝臓内の脂肪変性、尿細管の変性などが観察されました。また、一定範囲の投与量以上ではALT(肝機能を示す酵素)の上昇、腎機能においても様々な機能の悪化が確認されました。
これらの結果から、ジブロモクロロメタンはGHS分類の区分2(飲み込むと非常に危険)に該当し、主に肝臓と腎臓への影響があるとされています。ただし、ヒトに関する情報は限られているため、その影響は不明な部分があります。
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ジブロモクロロメタンは
法律で規制されている
ジブロモクロロメタンは上記に挙げたような毒性のため、日本では5つの法律によって規制されています。
・化管法
・大気汚染防止法
・航空法
・船舶安全法
・水道法
水質については水道法の管轄であり、ジブロモクロロメタンの濃度は1Lあたり0.1mg以下でなければならないと明記されています。そしてこの基準を超えていた場合は、追加処理で基準値以下にすることが義務付けられています。
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水道水にジブロモクロロメタンは存在する
ジブロモクロロメタンは、水道水中に必ず含まれる塩素が反応してつくられる化合物なので必ず含まれています。
ただし、厚生労働省による水道水での検出状況等を参考にすると、浄水では94%が検出基準の10%以下となっていました。
残りの6%も検出基準を大きく下回る結果であり、ジブロモクロロメタンは水道水中にごくわずかしか含まれていないということが言えます。
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ジブロモクロロメタンの
家庭で行える除去方法3選
日本では法規制のため、水道水中のジブロモクロロメタンのリスクはほとんどないことが分かっていますが、どうしても心配に思われる方もいると思います。ここでは自宅でも簡単にできる除去方法について3つ紹介します。
沸騰
ジブロモクロロメタンなどのトリハロメタンを除去するためには、沸騰させることが有効です。
家庭でも簡単に実施できますが、注意点があります。
トリハロメタンの量は水温が上がると増加する性質を持っていますので、煮沸が不完全な場合は逆に濃度が上がってしまう可能性があります。
しかし、ジブロモクロロメタンを含むトリハロメタンは気体になりやすい性質をもっていますので、沸騰させると短時間で取り除けます。
大体10分以上沸騰させれば十分でしょう。
この方法の場合、必ず沸騰時間を意識するように注意してください。
浄水器
浄水器を使えば、簡単にトリハロメタンを取り除いた水を飲むことができます。ただし、ろ過材は定期的に交換する必要があります。交換を怠ると、以前に取り除いた不純物が再び混入し、水道水よりも不純物が多い水を飲むことになります。
また、浄水器は消毒用の塩素も取り除いてしまいますので、早めに飲みきることがおすすめです。
浄水型ウォーターサーバー
浄水型ウォーターサーバーは、簡単にジブロモクロロメタンを含む不純物を取り除いた水を飲むことができます。さらに、他の不純物も効果的に除去されます。ただし、浄水器と同じく、定期的なカートリッジの交換が必要です。
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まとめ

今回はジブロモクロロメタンと言う化合物について説明しました。そして以下のことが分かったと思います。
- トリハロメタンの一種である
- 動物実験の結果、生殖毒性、臓器毒性を引き起こす可能性がある
- 水道法により、水質基準が設けられている
- 煮沸、浄水型ウェーターサーバーなどで簡単に除去できる
ジブロモクロロメタンは日本に在住している限り、十分な除去処理がなされており、身体への悪影響を気にする必要はほとんどありません。
ただし微量とはいえ水道水中に含まれているので、どうしても気になる場合は今回お伝えした除去方法を試してみてください。