「クロロホルムは身体に良くない」と聞いたことはないでしょうか。
しかし「クロロホルムって何?」「どうして身体に良くないの?」
と知らないことが多くありますよね。
クロロホルムは私たちの身近なところに存在しています。
この記事ではクロロホルムとは何かを分かりやすく紹介します。

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クロロホルムって何?
クロロホルムは化学物質です。トリハロメタンのひとつで、トリクロロメタンとも言われます。
クロロホルム自体は蒸発しやすい性質を持っている無色透明の液体で、常温で日光にさらされたり、暗所でも空気が存在したりすると徐々に分解され、有毒物質を生じ身体に悪影響があることが分かっています。
クロロホルムは主に化学品の製造原料として使われています。
こちらにクロロホルムが使われている製品の一部をまとめました。
・冷蔵庫やエアコンなど熱の温度を移動させるフッ素系冷媒(れいばい)
・配管や薬液容器、ポンプなどフッ素樹脂の原料
・医薬品(消毒剤)
・ゴムやロウなどの溶剤
私たちの生活製品に欠かせない原料であるクロロホルムは、安全性に十分配慮された上で私たちの生活に存在しています。
またクロロホルムは、上下水道水の塩素処理でも発生することがあります。
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クロロホルムの歴史
クロロホルムは1831年に発見され、1847年にロンドンの病院にて初めて人に使用されました。
同じ年に、産科医が無痛分娩の麻酔としてクロロホルムを用いています。
そして1853年と1857年に、当時の女王であるヴィクトリア女王の無痛分娩で使用されました。
人に関するクロロホルムのデータは、クロロホルムの麻酔により、吐き気・嘔吐・疲はい(疲れてぐったりする)から、肝不全による黄疸・昏睡・尿細管壊死・腎不全・心不全などが認められています。
日本ではクロロホルムは昭和40年代まで、麻酔薬として使用されていた歴史があります。
クロロホルムによる麻酔は、命に関わる副作用を引き起こすこと分かったため、後に他の麻酔薬が使用されるようになりました。
現在クロロホルムは麻酔薬としては使われていません。
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クロロホルムの発がん性とは
厚生労働省によると、過去に行われたラットのクロロホルムの実験では、発がん性があることがわかっています。
なおクロロホルム自体に発がん性があるというわけではなく、クロロホルムによる発がん性には閾値が存在するといわれています。
閾値とはその値を境界に異なる結果になることで、この実験の場合は、あるラインまでは害がなく、そのラインを越えると害がでるというイメージです。
クロロホルムの発がん性の機序は、クロロホルムの代謝物により持続的にラットの細胞が障害され、障害された細胞が修復しようと新しい細胞をつくる過程でがんが発生するといわれています。
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吸入すると引き起こされる症状
呼吸器、肝臓、腎臓への発がん性があること以外にも、クロロホルムを吸入すると咳やめまい、感覚麻痺、頭痛、吐き気、嘔吐、意識喪失などを引き起こすことがあります。大量に吸入すると、心拍の低下、最悪の場合は死に至る可能性もあります。
クロロホルムを皮膚にばく露すると発赤、痛み、皮膚の乾燥を引き起こします。また、目にばく露すると痛み、発赤、催涙を引き起こすことがあります。
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水道水にクロロホルムが存在する理由
日本の水道水は、雑菌や細菌の消毒・殺菌のために塩素消毒が行われています。
なぜ塩素消毒がされているのかというと、水道水の源である河川や湖には雑菌や細菌が多くいるため、塩素消毒をしない状態で飲んでしまうと、健康に影響を及ぼすリスクがあるからです。
しかし、塩素は消毒や殺菌にすべて使われず一部残り、この残った塩素を残留塩素といいます。この残留塩素が有機物と結合することで、クロロホルムが生成されます。
水道水に含まれるクロロホルムの量は、水道法の水質基準によって厳しい値が定められており0.06㎎/L以下ととてもわずかな量です。
日本の水道水に含まれたクロロホルムで健康被害の報告は今までなく、健康被害を強く心配する必要はありません。
また日本の浄水場や配水場では、定期的に水質検査を行っています。
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水道水のクロロホルムを除去するには
水道水のクロロホルムは簡単に除去できます。
日本の水道水は安全に飲めますが「クロロホルムを除去した水道水を飲みたい」と考えている方は、こちらで紹介する方法を参考にしてくださいね。
煮沸で除去
水道水のクロロホルムは、煮沸で除去ができます。
やかんや鍋に水道水を入れ、沸騰したらフタを外し、10分以上煮沸するとクロロホルムが取り除けます。
数分の煮沸はクロロホルムが増えるため、10分以上煮沸することがポイントです。
浄水器・浄水型ウォーターサーバーで除去
また浄水器や浄水型ウォーターサーバーの種類によって、クロロホルムが除去できます。
浄水器は水道に専用のカートリッジを取り付けて、蛇口を捻ると浄水された水が出るものです。
浄水型ウォーターサーバーは水道水をタンクに注ぎ、水道水がウォーターサーバー内のフィルターを通ることでクロロホルムが除去されます。
どちらもカートリッジ・フィルターは使用期限がありますので、定期的な交換が必要です。
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まとめ

クロロホルムは私たちの身近なところで存在していますが、健康に害がないように安全面で十分な配慮がされています。
クロロホルムの歴史は長く、麻酔薬として使うと人の命に関わることやラットの実験では発がん性が確認されています。
過去のデータから、水道水に含まれているクロロホルムの量は厳格に定められており、現在日本の水道水によるクロロホルムの健康被害は報告されていません。
安心して水道水を飲めますので、心配しなくても大丈夫です。
また浄水場や配水場では定期的に水質検査を行っており、水質基準値内か確認されています。
それでも水道水が心配な方は、浄水器やウォーターサーバーを取り入れると良いでしょう。
【参考サイト】
クロロホルムに係る健康リスク評価について:環境省
推理小説と麻酔薬‐クロロホルムの真相‐:独立行政法人 労働者健康安全機構 青森労災病院