テトラクロロエチレンは工業的に作られている化合物で、
かつてはドライクリーニングなどに広く使用されていました。
しかし、このテトラクロロエチレン、
土壌汚染などの問題で現在は規制されつつあります。
この記事では、テトラクロロエチレンとは何なのか、
身体や環境にどのような悪影響があるのか、
水道水に含まれる可能性などについて解説します。

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テトラクロロエチレンは
ドライクリーニングなど
身のまわりで使用されている
テトラクロロエチレンは身近で使われている化合物です。テトラクロロエチレンは常温では液体ですが、揮発性が高くすぐ蒸発します。甘い悪臭がするので、ごく少量でもその存在に気付くと言われるほどです。
ほとんどの有機化合物を溶解する特性があり、水を使用できない汚れを落とす際に用いられています。使用用途としては、ドライクリーニングや金属の洗浄など。その他自動車の部品から油汚れを落とすのにも使われます。
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テトラクロロエチレンは
健康に悪影響をもたらす可能性が高い
テトラクロロエチレンは洗浄力に優れた物質である一方、その毒性も問題となっています。
ここでは主なものを3つ紹介します。
・呼吸器への影響
・発がん性
・生殖毒性
特に発がん性、生殖毒性に関しては心配になるデータも存在します。順番に見ていきましょう。
呼吸器への影響
テトラクロロエチレンは、ドライクリーニング作業員などの長期間の高濃度ばく露により、喘息の症状を引き起こすことが報告されています。喘息発作は、急激な呼吸困難、咳、胸部圧迫症状を引き起こします。
ただし、呼吸器症状が吸入直後に現れるため、免疫反応よりも刺激による反応である可能性もあります。加えて具体的な免疫学的な証拠も不明であり、一般的なリスク分類は難しいとされています。
発がん性
テトラクロロエチレンは、IARC(国際がん研究機関)とNTP(米国毒性プログラム)により発がん性の懸念がある物質と分類されており、GHS区分で1B(ヒトに対しておそらく発がん性がある)と定義されています。
動物実験では、ラットとマウスで発がん性が示されており、厚生労働省からも健康障害を予防するための指針が出されています。ただし、ヒトにおける直接的な因果関係の実証はされていません。
生殖毒性
ラット実験で親動物に毒性のある量を投与した結果、仔の生存率の低下と、授乳中の仔の死亡率増加がみられ、別の研究では運動障害も確認されました。これらの結果をうけてGHSの区分では2(ヒトに対する生殖毒性が疑われる化学物質)とされています。
また1995年のIARC vol.63によるとテトラクロロエチレンはヒトの母乳中に存在し、乳児の健康に影響を与える可能性があり、特に黄疸や肝腫脹が報告されています。生殖毒性に関しては、ヒトでのデータが存在するので信ぴょう性も高いでしょう。
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テトラクロロエチレンは分解されにくく、
環境汚染リスクが高い
テトラクロロエチレンは環境中でなかなか分解されず、地下水や河川の汚染物質として問題視されています。また揮発性が高く大気汚染の原因にもなります。そのため日本では多くの法律で規制されており、ここでは特徴的なものを紹介します。
化学物質審査規制法
1989年にテトラクロロエチレンは第二種特定化学物質として指定されました。これにより、製造や輸入時には予定数量を国に届け出る必要があり、取扱いに際しては環境保全の指針を遵守する義務も課せられました。
土壌や地下水の汚染
テトラクロロエチレンはかつて土壌汚染の原因物質として報道されることがありました。テトラクロロエチレンの特性として
・水より重く浸透しやすい
・土壌に吸着されにくい
・粘性が低い
ということがあります。このため地下水への汚染が拡大しやすく、広範囲に汚染が広がることもあります。このため土壌環境基準や地下水基準が設定されています。
環境省による大気汚染についての対策ガイドライン
1993年には環境省からテトラクロロエチレンの大気汚染について対策ガイドラインが都道府県知事あてに通達されました。これによると各都道府県は
1. 関係する工場や事業場の所在を把握すること
2.周辺環境の濃度測定を実施すること
3.測定結果に基づいて影響や排出源の特性を考慮し、必要に応じて排出の抑制を計画的に進めること
以上を事業者に協力要請する必要がありとされています。
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テトラクロロエチレンは分解されにくいため、
水道水に含まれている可能性がある
テトラクロロエチレンは環境中に排出されるとなかなか分解されず、地下水や河川の汚染物質として問題視されています。分解されにくいため、水道水中に含まれる可能性があります。
水道法ではテトラクロロエチレンの濃度を1Lあたり0.01mg以下に規制しています。これはWHOの1Lあたり0.04㎎よりも厳しい制限です。水道統計によるとテトラクロロエチレンの含有量は、浄水の99.6%で基準値の10%以下であり、基準値超えで処理対象となったのは7年間で0.005%です。もちろん基準値を超えた場合は適切な処理をされるので、基本的に安心して良い結果と言えるでしょう。
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水道水中のテトラクロロエチレンは
家庭で除去することができる
水道水は安全とはいえ、どうしてもテトラクロロエチレンを完全に除去したいという方もいるでしょう。ここではテトラクロロエチレンの除去方法を3つ紹介します。
1. 沸騰:家庭で手軽に実施できますが、煮沸時間が十分でないと濃度が増加する可能性があるため、十分に煮沸することが重要です。
2. 浄水器:浄水器を使用すれば、テトラクロロエチレンを除去した水を飲むことができます。ただし、ろ過材の定期的な交換が必要です。
3. 浄水型ウォーターサーバー:水道水を補給するタイプのウォーターサーバーは、テトラクロロエチレンを含む不純物を効果的に除去し、清潔な水が飲めます。カートリッジの定期的な交換が必要です。
これらの方法を利用することで、自宅でもテトラクロロエチレンを除去した安全な水を利用できます。
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まとめ

今回はテトラクロロエチレンについて説明しました。
・テトラクロロエチレンは自然界で分解されにくく、環境汚染が懸念される化合物である
・ 発がん性、生殖毒性に関しては高いレベルの危険性がある
・浄水型ウォーターサーバー、煮沸などで除去が可能
日本の水道水は非常に厳しい基準を満たしているため、ほとんど心配する必要はありません。それでも心配であれば、浄水型ウォーターサーバーを使用すれば、簡単に水道水に含まれるテトラクロロエチレンをはじめとしたさまざまな物質を除去でき、安全な水を飲むことができます。